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放射線被ばくについて

こんにちは!茹だる様な暑さが続いたと思ったら急に涼しくなったり、コロナが急激に増えてきたりで大変な日々をお過ごしのことと思います。どうか体調にお気をつけてこの夏を乗り切ってください。

 さて、今回は放射線の被ばくについてお話していこうと思います。

皆さんは放射線に被ばくする事にどんな印象をお持ちでしょうか?一般的には、「放射線に被ばくすると、ガンが発生したり体に悪い影響があるんじゃないだろうか?」と思っている方が殆どだと思います。実際に大量の放射線に被ばくすると、体に様々な変化を起こし最悪な場合亡くなる事も起こりえます。ここで勘違いしないでほしいのが、被ばくする放射線が人工的に作られコントロールされたものなのか?それとも全くコントロールがきかず無尽蔵に放射されている放射線なのか?放射線といわれるものでも実は全く別物だということをお話します。

 無尽蔵に放射される放射線は、原発事故などでもある様な、自分で放射線を出し続ける能力を持つ物質が何年とか何万年もの間放射線を出し続け、周りの環境に対して放射線被ばくを与え続けるものです。人の手では全くコントロールがきかないものなのです。この物質が持っている能力を放射能といいます。この能力は物質によって違います。数分で人を殺傷できるようなものから全く影響のないものまで様々です。

 一方、医療で使われる放射線は人工的に放射線を発生させ、量も質(線質)もすべてコントロールされたものなのです。放射線治療や核医学検査を除くとほぼX線という放射線が使われています。医療で人体に放射線を使用する場合、被ばくさせるリスクと被ばくした事から得られる利益を比べて、利益が大きいと判断したときにX線を使った検査を行っています。つまり必要な検査においてのみ放射線を使用し、最低限の被ばくにとどめるよう考えられています。

 ここで検診による被ばくは「医療じゃないからリスクのほうが大きいんじゃないの?」
と思われる方がいらっしゃると思いますが、日本で推進されている検診に関して言えば寿命を延ばす効果があると厚生労働省により認められているものなのです。これは個人ではなく集団で考えた時の判断ですが、検診を受診していない集団と検診を受診した集団で比較した場合、検診を受診した集団の方が寿命延長効果があるという事が、統計学的に認められています。それは例えば、胃がん検診を受けた人と受けない人では胃がんによる死亡率が約半分に低減されます。もし胃がんにかかったとしても手遅れになるリスクが半分になるという事です。さらに検診受診者の利益をあげるために当検診施設では、平成5年5月より神奈川県では最も早く画像診断のディジタル化を行い、胃の検査においてディジタル化により可能となった被ばく線量を従来の1/10まで低減して検査を行うことを約30年前から行っており、現在も最低限の被ばくで最大の結果を得られるように努力しています。肺がんCT検診では従来の約1/30の線量で検査を行っており被ばくを気にすることなく安全に検査を受診していただくことができます。この肺がんCT検診も検診による寿命延長効果があると認められたものです。

 医療や検診で使われているX線による被ばくは、いわゆる放射能とは違うもので必要以上に怖がる必要はなく、被ばく量に関しても安全な範囲内にコントロールされているものであるという事を理解していただきたいと思います。人間が生きていくうえで放射線被ばくは避けられないものです。土壌からの放射線、空気中からの放射線、宇宙からの放射線など様々な自然放射線があり常に被ばくしている状態です。飛行機に乗ると宇宙からの放射線は約2倍になります。だからと言ってそれを気にしている人はいないでしょう。医療行為における放射線もこれと同じで、必要な最低限の放射線被ばくと考え、巷で言われている放射能による被ばくと切り離して考え、不安なことがあれば担当医師や技師にご質問ください。

横浜鶴ヶ峰病院放射線科

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